カラスがせっけんを持って行っちゃった!
  
  
 
 八柱幼稚園の保護者の皆さん、良い子の皆さん、こんにちは。
ご覧になった方がたくさんいらっしゃるかと思いますが、
 5月15日(水)にフジテレビの 「 世界の何だコレ!?ミステリー 」 2時間スペシャルで、八柱幼稚園で過去に起きた ある不思議な出来事が紹介されました。
実は、たまたま筆者がこの出来事について 当事者の一人だったことから、今回取材を受けることになりました。
 そして、そのことについて 情報を正しくお伝えするために、少し解説を加え 補足説明をさせていただきたいと思います。
 どうぞよろしくお願い致します。
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 取材
番組制作会社より、4月10日ごろに取材の依頼があり、4月19日(金)に幼稚園内で インタビュー形式の取材を受けました。
 スタッフの方は、番組編成の締め切りが迫っていて かなり急いでいるようでした。
この取材では、筆者と副園長の〇〇先生の2名がインタビューを受けましたが、本放送では〇〇先生の部分は残念ながらカットされていました。
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 さて、
 皆さんに先ず最初にお伝えしておきたいことがあります。
この不思議な出来事は いったいいつ起きたのかということです。
 それは、
 ずばり 2000年 ( 平成12年 ) の初頭で季節は冬でした。つまり、 今から24年も前の出来事だったのです。
参考:
 2000年当時は、物珍しさと話題性から、テレビ各局が競って取材に訪れました。
 中でも、いち早く報道されたのは新聞でした。
 取材は ラジオ・新聞・雑誌とどんどん拡大していきました。
 
 テレビは やはりインパクトがあって、
 フジテレビを始め、NHKや日本テレビ、TBSなどで、次々にテレビ放送されました。
 少し大げさに聞こえるかも知れませんが、取材がエスカレートしていくにつれて、ちょっとしたブームのような現象が起きてしまいました。
 テレビレポーターの落語家さんが、早朝の誰もいない幼稚園内にフェンスを乗り越えて入り込んでいたり、対応にはそれなりに苦労しました。
 
 ◇

 今回、取材があったフジテレビの番組編集部では、この過去の出来事が 今でも面白さと話題性があり、番組の内容にぴったり合うと考えて、取材の判断を下したものと思われます。
 しかしながら、放送された内容には、この出来事がいつ起きたのかについては一切触れられていませんでした。
 テレビを観た方のほとんどは、これは 今現在の幼稚園で起きている出来事だという認識を持たれたのではないかと思います。
 その誤解を解いた上でお話しを進めていきたいと思います。
 カラスがせっけんを持ち逃げするという出来事は、24年前にあった古いお話しなのです。
現在、せっけんを盗られることは一切ありません。
 不思議な出来事の原因が、カラスの仕業だったと判明してから、せっけんは 保育終了と共に先生方によって片付けられるようになり、カラスが付け入る隙は無くなったのです。
繰り返しになりますが、
 カラスがせっけんを持ち逃げするという出来事は24年前にあった古いお話しで、現在 せっけんを盗られることは一切ありません。

 今回の 「 世界の何だコレ!?ミステリー 」 では、カラスはせっけんを食べるということと、なぜ食べるのかということについて少し触れていました。
 *
*
 24年前、東京大学の研究チームが調査!
 
 カラスがせっけんを盗む理由は何か?
 
「 世界の何だコレ!?ミステリー 」の番組の中で、東大の研究チームが調査したことが 写真で紹介されていました。
 そして、 なんとっ!!
 その写真に写っている人物は、
 実は 電波受信機を持って調査中の24年前の筆者でした。
フジテレビでは、過去の放送や局に保管してあった資料を引用して今回の番組を編集したと思いますが、まさか東大の調査を筆者が行っていたとは思わなかったのでしょう。
実際のところ、調査の多くは 依頼を受けた筆者が行いました。
 東大の先生やスタッフの方は、主に土・日にやって来て記録を確認したり、一緒に調査をしたりしました。
 毎日決められた時間に調査を行い記録を付けて行きますので、幼稚園の仕事もありますから 容易なことではありませんでしたが、調査の成果が出て欲しいとの思いで 何とか がんばりました。
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さて、話がとても長くなってきました。
 このあと、どのように文章展開すれば良いのか迷うところです。
 そこで、
 下記のアドレスをクリックしていただくと、24年前に調査した内容が一目でわかるサイトがありますのでそちらを覗いてみてください。
↓ 講談社のサイト2022.11.29の記事へ移動します。
https://cocreco.kodansha.co.jp/move/news/repo/RDuCl
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↑ 上のサイトに出てきた方は、東大チームと一緒に調査にも関わりましたし、鳥類を特に専門で研究していて本や図鑑の執筆活動を行ったり、野外に出て園児の活動を指導したり、過去にはNHKの番組を作ったり ( カラスのせっけん関連でもお世話になりました )、 とても多才な方です。
筆者は、講談社のサイトでご覧になったせっけんに埋め込まれた発信機の電波を受信して、カラスが盗ったせっけんの隠し場所を探し当て、記録を付けて行きました。
冬のあいだは、食べ物が少なくなりますから、カラスにとってはせっけんも貴重な栄養源となったのでしょう。
 
 せっけんは、落ち葉の中や、植え込みの中などに隠されていました。
 カラスは元々このような行動( 貯食行動 )をとる習性があります。
 食べ物をいったん隠して、あとから出して食べるのです。
 せっけんは、毎日ではありませんが 転々と移動されました。
 カラスは、せっけんを時々移動しては隠し、その度にせっけんに対してあることを続けていました。
調査は大変でしたが、カラスの行動が手に取るように分かって、大変勉強になりました。
 調査を進めていくと、カラスは複数いることも分かってきました。
ただ、調査には大きな問題がひとつありまして、
 カラスは、人間の望んだとおりの場所には移動してくれないということです。

どういうことかと言いますと、
 カラスは せっけんを 時々移動させていく途中で、どうしても民家の庭にもせっけんを隠してしまうのです。
調査の目的やこれまでのいきさつを丁寧に説明して理解を求め、納得していただいた上で記録を取り、さらに撮影をして、せっけんは回収せずに 元通りに落ち葉をかぶせて帰ります。
 せっけんは、そのまま残しますから民家の方の協力がないと その時点で調査はストップしてしまいます。
 この様な地道な作業を延々と続けていきました。
 大きなアンテナを持って、肩にはバッテリーとカメラをぶら下げ、毎日夕方になると うろうろと歩き回る男がいるのです。
 時々、地元の方から不審者に見られたㇼ、あるいは迷惑がられることがあり、その度にお詫びして 丁寧に何をしているのかを説明しました。

 この調査は、
 東大の研究チームが、カラスが何のためにせっけんを持ち去るのかを突き止めるためのものでした。
 ですから、
 調査が始まった時はまだ理由が分かりませんでした。
◇
この様な調査が嫌いではなかった筆者は、ある仮説を立てました。
「 カラスは、せっけんを食べてるんじゃないのかな? 」
東大の先生から頼まれた調査はしっかり続けながら、私は自宅である実験をしました。
 ただし、
 その実験は 東大の先生から頼まれた訳ではなく、個人的に物は試しとやってみただけのことでした。


 自宅の郵便受けの上に、無造作にポンとせっけんを置き、
 ビデオカメラを仕掛けて録画する。
 これだけの作業を数回やりました。
ご近所には、詳細な手紙を作り 実験の内容を伝えました。
◇
そして、
 なんと すごい映像が撮れたのです! ( 大げさですね。 )
郵便受けの上側は幅広で、水平に取り付けてあったため カラスが一羽乗ってせっけんをくわえるくらいなら十分な広さがありました。
そこへ飛んできた一羽のカラスが、
 郵便受けの上でしばらく滞在します。
彼は、片足の無いカラスでした。
そして、なんと彼は 安心しきった様子で 石けんを食べ始めたのです。
 ていねいに突っついて、せっけんの破片をくちばしでつまみ、その際 のどを震わせながら旨そうに飲み込むんでいました。
 そして、その後は せっけっんを持ち去るのでした。
片足の無いカラスは、数回の撮影でほぼ毎回やって来ました。
画期的な映像でした。
 私はすぐに東大の先生へ連絡しました。

「 それは、すごいです。 とにかく映像を見せてください! これで、調査の目的が一気に解決します。 」
チームの調査依頼とは別のことを勝手にしていたことの後ろめたさはありましたが、東大の先生だけはとても喜んでくださいました。
 その後、この映像は どこかの局の番組で使用されましたが、まさに大スクープのような感じでした。
カラスはせっけんを食べるということが映像によって証明され、調査の目的は一気に達成されました。
◇
いつしか、時間の経過と共にせっけんの話題も消えていきましたが、
 その後  しばらく経って 東大の先生から連絡があり、カラスがせっけんを食べていることを学会で論文発表するということでした。
 しかも共同発表で、私の名前も入れてもらえるということでしたから、大変名誉で、ありがたい話でした。

そして、
 後日、英文の論文を見たら、私の名前があったのですが、
 そこにはなんと、Miyagawa と書かれてありました。
 先日のフジテレビの放送でも ナレーターの方が 同様に名前を読み違えてたなぁと思い出して、私はこの原稿を書きながら 可笑しくなってしまいました。
でも、その読み違えがあって、それが 幼稚園の先生や園児・保護者・卒園児とのあいさつ代わりになったりして、逆にちょっと楽しませてもらったような 得をした気分になれたのです。
◇
今回は、カラスのせっけんのお話を、過去の経験を加えて少し詳しく説明させていただきました。
簡潔で分かりやすい文章を目指しましたが、だらだらと長い文章になってしまいました。
お伝えしたかったのは、
 カラスがせっけんを盗ったのは過去のことで、今は全くその事実はないということです。

